この投稿は、インターネット老人会Advent Calendar 2023の5日目の記事です。
同名の会社もありますが、いわゆるインターネット老人会的に有名なTMJといえば「たらいまわしジャパン」です。
ひとことで言えば当時のインターネットの仕組みや習慣を逆手に取ったいたずらなのですが、いろいろな人がひっかかりつつも「一杯喰わされた」と笑い、中には自分も参加する人が出るほどにウケたコンテンツでした。私も実は一杯喰わされ、そして参加したひとりです。
企画者が数十人ほどの協力者を募り、順番を決めて、「移転元」に「移転先」のURLを伝えます。「移転先」を指示された協力者は、自分のウェブページスペースの一箇所に『TMJ』の「移転告知ページ」を作成して、「移転先」へのリンクを貼ります。デザインは協力者の自由でしたから、さまざまな移転告知ページのデザインを楽しめることもあり、「あーこれいたずらだな」と分かった人も、「次はどんなページなんだ?」と思わず辿ってしまう意味で、エンターテイメントとしてもよくできていたように思います。
数回ほど企画され、最後に協力者たちが集まってオフ会を開くほど盛り上がったのが2003年ごろ。もう20年も前なのですね。中には、TMJで知り合っていまでもインターネット上の友人となっている人さえいるほどです。
昔、1990年代後半から2000年ごろまでのことでしょうか、ウェブページといえばHTMLを自分で書いたりウェブページ作成ソフトで作成したりしたものを、プロバイダーのウェブページスペースにFTPでアップロードするものであった時期がありました。
プロバイダーを変えたり、あるいは独自ドメインのレンタルサーバーを借りたりするとウェブページは移転するものであり、また、いまみたいに、気づかないうちにリダイレクトができるような仕組みは整っていませんでした。
ですから、プロバイダーが変わることによるウェブページ移転のお知らせというものを、昔はよく見かけたのです。
これがTMJといういたずらが成立した背景です。
いまのインターネットではTMJのようないたずらは成立しないだろうと思います。
というのも、いまではウェブサイト作成者のモラルが問われる事案になると思われるからです。ただでさえ偽の告知によって金銭的な被害が出てしまうような時代になりました。SNSでコンテンツが提供される時代では「楽しいウェブサイト」というだけでは人は来なくなり、かといって何らかの役にたつサイトでTMJのようなことをしてしまうとフィッシングを疑われてしまいます。すぐに嘘だと分かるかどうかが分からないので、エイプリルフールの題材にも向かないように思います。
というか、いまTMJのようなことを思いつく人がいて実行に移そうとしたら、私なら、止めます。
……と、そんなふうに考えると、「たらいまわしジャパン」に参加した経験は、インターネットのいまとむかしを理解するうえで、貴重な経験だったのかもしれません。